スマホの使用で起こる頚部痛
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スマホっ首って何?
最近ではスマホっ首などと言われ、触察や静止画像のみでストレートネックと判断され、信念を固めた患者さんをよく見受けます。
スマホの使用は首や肩に負担をかけることは事実ですが、あまり科学的には説明されていない感じがします。
肩や首への倦怠感や痛みは僧帽筋上部に訴えることが多く、胸鎖乳突筋の過緊張や圧痛も確認できます。
腕や手指の使用と頚部への負荷がスマホによる力学的負荷ですが、視覚や刺激による自律神経系への作用も首肩への過緊張が生じる要因でもあると考えます。
よって、セラピスト側がこのような造語で警鐘を鳴らすのは相変わらず「疼痛」目線ではなく、マーケティング目線なのを感じずにはいられません。
メカニカルなストレスとしての考察
まずは、物理的に起こる負荷に関して考えるといくつかの文献を読むと、ほとんどが頚部屈曲50°が最も頚部または僧帽筋上部に倦怠感を感じたという報告でした。
ここでいうのは「頚椎」ではなく、「頚部」です。
よって、頭をまっすぐに保った状態から地面との平行線に対して50%以上に差し掛かると疲れやすくなるというイメージです。
頭をまっすぐにした肢位は耳から肩に垂線が引ける位置と考えます。
そのため、頚部が前方に突出した姿勢の人にとってはかなり顎を引いた姿勢になります。
筋活動としては首の屈曲角度が増すごとに僧帽筋上部の活動は減少し、逆に頚部起立筋の活動が増加します。
首の痛みがある人とない人での比較では、痛みのない人の方が筋の活動は高くなるがどちらも0°~15°で頚部起立筋と僧帽筋上部の筋活動は極端に低かったことから、この痛みの有無に関わらず、0°~15°が許容範囲だということになります。
スマートフォンのタスクの違いによる頚部ストレス
スマートフォン視聴時のタスクの違いではブラウジングよりもテキスト視聴と送信を行ってるときの方が、頚部の屈曲角度が大きいという報告があります。
また、テキスト作業をPCとスマホで比較するとスマホのテキスト入力時は首と親指の筋活動は高いが、僧帽筋と手首の伸筋の活動は低下したとあります。
使用時間に関しては時間が長くなるにつれて頚部起立筋と僧帽筋上部の倦怠感は増加します。
これに対しては最低20分間の休息を挟むことで軽減することもわかっています。
このことから、スマホ作業は首へのストレスが高いということがわかりました。
臨床的には痛みの強い時期はスマホでのテキスト作業を極力避けてもらう指導や、首の角度の指導だけでなく、スマホ依存に対する自己効力感を養う必要もあります。
スクリーン管理をするなどして、週単位などで時間を決めて取り組む必要もありそうです。
また、これらは構造的に改善することではなく、整体などでいう「スマホ首を直す」という考えはかなり危険だと考えます。
頚部痛は腰痛以上に再発率、慢性化リスクが高い症状です。
首の骨の配列を徒手で直すということは物理的に不可能です。
運動療法や適度なストレッチ、呼吸法などが推奨されます。