骨盤のゆがみの真偽について考察すること
目次
骨盤はゆがむのか?
骨盤矯正が広く認知され、その施術によっての効果を広めたことで、どこか悪いところがあり、整形外科などで痛み止めや湿布薬しか処方されないと、骨盤がゆがんでいるんじゃないか?と選択肢にする方は増えているように感じます。
しかし、これらは医学的に妥当性があるか?というとまだまだ不明なところで、むしろ無資格者による事故事例も後を絶たないため、問題視されることもあります。
私どももカイロプラクティックの治療院からスタートしている院ですから、骨盤については様々な検証を重ねてきました。
そもそも、骨盤はゆがむのか?という問いにはいくつかの視点があります。
①骨盤にある仙腸関節の関節の遊びの制限
②骨盤全体の左右差
③骨盤の前傾、後傾に伴う開閉
④脊柱や股関節の捻じれによる相対的な差
このように観察者によって視点がいくつも存在します。
医学的に骨盤がゆがむという基準値が存在しません。
このことが混乱を招いている理由だと思います。
よって、骨盤がゆがむ、ゆがまないで議論することに結論は出ないと思います。
触察の真偽
私たちは手で体に触れて(衣類の上から)、骨や筋肉を触知しながら判断します。
これを触察と言います。
この触察に関する研究で、PSIS(上後腸骨棘)の触察に関する13の研究報告によると、触察によるPSISの非対称性の信頼度は得られず、別の方法を模索する必要があると報告されています。
骨盤の触察は術者の完全な主観であり、事実ではなく、ゆがみの存在を証明するに値しないということになります。
触察で信頼性が高いとされているものは痛みの触知と言われています。
骨盤や腰椎部における痛みのある部位に対しては臨床的意義はありますが、位置情報に対してはそれと相関しません。
当院ではズレやゆがみを表現することはせず、患者が訴える痛みの触知に心がけています。
骨盤のゆがみが痛みをつくるという信念
では、実際に骨盤のゆがみを感じる人はいるのか?
ということになります。
実際の所、妊婦の骨盤帯痛の方や慢性腰痛患者では痛みのない人に比べ、骨盤に「不安定感」を感じる人は多いようです。
これらはアクティブSLRを行って、痛みが誘発されることで感じることのようです。
ASLRで痛みが感じられなくなると、骨盤の不安定感も感じなくなるようです。
骨盤のゆがみというのは、一般的にはあまり感じにくい感覚です。
しかし、施術者やインストラクターから繰り返しかけられた言葉によって認知しやすくなるというのはあるようです。
脳は他者にネガティブな評価ばかりされていると、ネガティブな情報を学習してしまう傾向にあります。
それが上司や情報量の上位の者であると余計にそうなります。
人間の脳は悪いところを無意識に認知します。良いところをみつけるのは高度な脳のはたらきです。
そのために、「骨盤のゆがみ」というパワーワードで否定されることで患者は痛みと結び付け信念化します。
それはもしかすると運動のアンバランスかもしれませんし、左右の個性かもしれないのです。
そもそも人体は非対称なものです。
それを「ゆがみ」とするのか、痛みの誘発と鎮静という見方をするのかで伝え方が違ってきます。
カイロプラクティックは刺激に対する反応です。
ゆがみを正した結果ではなく、刺激に対して反応した結果です。
骨盤矯正は言葉自体がおかしいですね。
他院のやり方を非難するというわけではなく、当院の方針は患者さんにかける言葉のひとつひとつを考えるようにしています。
同時に患者さんは原因を特定したがります。
骨盤がゆがんでると言われれば、安心もします。
逆に神経系の問題ですとか、生活習慣から改善しませんか?と言われると悩んでしまいます。
これはとても難しい課題ですが、当院は誠実に伝える努力を惜しみなくしていきたいと考えています。