何年も続く歩行時の膝の痛み
目次
患者
64歳男性 6月に整形外科にて
1)中等度のOA(変形性膝関節症)を認めます。内側において、軟骨の菲薄化と軟骨下骨髄病変を認めます。
2)内側半月板中節~後角には信号上昇(およびvolume減少)を認めます。変性損傷が考えられます。
3)前十字靭帯の腫脹と信号上昇がみられ、損傷が考えられます。
4)膝蓋上嚢に中等量の関節液を認めます。
左変形性膝関節症
左内側半月板損傷
左前十字靭帯損傷疑い
左膝関節水腫
このように診断されました。
検査
膝屈曲 荷重時に疼痛あり 他動ではなし 90°以上の屈曲を認める
下腿の動き 内旋制限
膝蓋の動き 上方可動域減少
圧痛点 膝内側関節列隙付近
歩行時 階段下り 片脚立脚時 動き始めに疼痛発現
静止時 問題なし
治療戦略
画像所見、診断が出ている以上、組織の修復は難しいと判断
運動療法による自己効力感を高め、痛みのコントロールなど、痛みの教育を軸に展開
選択プラン
フィットネスプログラム+都度払い
通院記録
痛みの教育と症状の説明
治るというよりは歩けることを目標に
当初は15分歩くことで痛みが強くなり、歩くことが辛くなる
痛みが強くなったら休むことを指導すると
休むと歩けるようになるとのこと。
痛みを感じると膝を曲げて誤魔化すしぐさをする。
痛みを気にしすぎるのか、よく膝を擦っている。
膝が痛いことでどのくらい頭の中を占めるのかを聞いてみると70%とのこと
それが多いか少ないかも聞いてみると「多い」
それは「痛い」からなのか「不快」だからなのか?と聞くと
「不快」という。
片脚で立つ時に立てないという苛立ちや不快さがストレスに感じるそうです。
では、本当に片脚で立つことができないのか?
壁に手を当てて立つと立てますが、離すと立てない
でも、繰り返していると立てます。
ということは、「片脚で立てる」が事実です。
この事実を体感してもらって1週間後
「膝を伸ばすということを今まで私はしたことがなかった」
ということに気がついたそうです。
そうしてからは痛みはかなり軽減したそうです。
施術後期
痛みは損傷に関わらず、脳が発しています。
もちろんこの方の膝の損傷はそのままです。変形もあります。
ただ、一つの事実が痛みを軽減させたのはとても不思議ですがこれもまた事実です。
ここまで来るのに3ヶ月以上かかっています。
そう簡単に意識は変わりませんが、言い続けて、様々な方法で伝えて
この方の腹に落ちた時にその変容が起こります。
タイミングがあります。
そのチャンスを逃さないように心がけています。