脊柱の弯曲と痛み
目次
脊柱の弯曲のこと
整体などの記事を読んでいると脊柱の弯曲について指摘した記事が多いことに気づきます。
ストレートネックや腰椎の過剰前弯(反り腰)などがよく指摘されています。
これらが頚部痛、腰痛の原因になるという考えがこれらを改善ポイントにしていることが理由です。
脊柱には頚椎の前弯、胸椎の後弯、腰椎の前弯、仙骨の後弯というカーブがあります。
このカーブは脊柱のmobilityとstabilityを同時に高めるために必要な構造です。
脊柱を構成するのは、椎骨・椎間板・靭帯です。これを垂直方向に支持するために筋肉が関わります。
脊柱の弯曲が少なくなるのは
・椎間板の変性
・椎体の変形
・筋力が弱い(細身の体型)
・活動量が少ない
また、弯曲が強くなるには
・背部の筋の緊張
・腹腔側(屈筋)の短縮
・肩甲骨の不安定
・頭部の前傾
このようなことが考えられます。
これらが痛みに影響するかどうかははっきりと分かっていません。
生理的弯曲の異常と痛み
ではなぜ、これらは痛みと紐づけやすいのでしょうか?
脊柱の弯曲が異常かどうかは組織的な変性が関わってきます。
椎間関節障害や椎間板変性など器質的な障害が見受けられる場合、これらが痛みの原因となり侵害刺激になり得ます。
このような変性を伴う脊柱は生理的弯曲の不整列を来します。
また、筋力の不均衡によるアライメントの不整列は筋スパズムや過剰な収縮を起こし、末梢神経障害がおこる事で血流障害などを併発し、痛みの増強因子になることもあります。
故に構造上の問題ではなく、退行変性による侵害受容または神経障害、それと筋の異常な収縮による神経障害とこれら弯曲の不整列が同時に見受けられるために相関性があると考える術者が多いのではないでしょうか?
私の考えとしては優先すべきは
①器質的な異常による痛みであれば整形外科の受診を視野に入れる
②筋の異常な収縮が痛みを引き起こす要因であれば、運動による疼痛コントロールが必要
③構造的な問題を徒手で改善できるという考えには疑問があるが、可動性の改善に一役買うことはできる
この辺りからアプローチを考えていきます。
構造だけを指摘することの害
施術者は構造または見た目だけ見て、痛みと結び付け治療対象にする場合があります。
患者さんは知識がないため、それを真に受ける人も多くいます。
徒手によるアプローチは一時的な痛みを緩和させます。
そこにプラセボが働けば効果があると感じるかもしれません。
しかし、原因が自分の脊柱の形状にあるということを痛みの信念として刷り込まれれば、常に痛みの因子を抱えているというバイアスがかかる可能性があります。
痛みは複雑系ですから、構造の主観的な判断だけではなく、患者さんの生活や痛みの感受性をしっかりと受け止めながら、脊柱の弯曲を改善することが実際にその人の痛みを軽減できるのかをよく精査し、判断する必要があります。
医学的なストレートネックは単なる屈曲気味の首ではありませんし、腰椎の後弯は徒手や運動で変わる物ではありません。
医学的な言葉を、簡便な言葉として内容の浅い説明にたくさん使われています。
私たちは、見た目、主観的な意見を患者さんに押し付けることのないように言葉に気をつけています。
売上だけのために治療することのないように。
患者さんの症状が改善する導きを大切にしたいと思っています。