コンピューター作業の上肢の障害への影響
目次
デスクワークが引き起こす体調不良
デスクワークのほとんどがコンピューター作業になって久しいと思います。
頚部痛、回旋腱板炎、外側上顆炎、手根管症候群、頚肩腕症候群など、コンピューター作業が原因とされる痛みは労作性の疲労が影響していると思われます。
不良姿勢が腰痛や頚部痛を起こすと言われていましたが、これらは近年、長時間の同姿勢によって増強するため、構造上の障害ではなく、神経系、循環系といった生理的な問題や認知の問題とされています。
日本人は7.5時間以上を机に向かって座っていると言われ、これは世界一とも言われます。
勤務時間は月に200時間だったものが、180時間まで低下したと言われていますが実質勤務時間が少なくなっているのはパートタイマーであり、正社員は未だ200時間を超えているとも言われています。
長時間のコンピューター作業は様々な症状や体調不良を招いています。
これらから身を守るためにできることを考えていきたいと思います。
コンピューター作業による上肢への影響
手首腱炎はコンピューター作業自体、コンピューターマウスとキーボード時間の間の因果関係、およびコンピューターマウス時間と前腕障害の間の関連についての限られた証拠を示しています。
頚部のテンションネック症候群に関してはコンピューター作業自体、マウスの操作時間に関する因果関係について限られた証拠がみつかりましたが、キーボード作業に関しては証拠が不十分だったそうです。
肩回旋腱板炎や外側上顆炎はコンピューター作業のあらゆる側面において証拠が不十分でした。
6000人以上を対象にした前腕、肘、手首の痛みを有する患者に対する調査で、10%の人が参加し、2/3がフォローアップ中にある程度改善されましたが実質改善されたのは1/3でした。
予後はマウスやキーボードの作業、時間、速度、マイクロポーズ、平均的な活動期間や職場の環境には影響されませんでした。
上肢の痛みの予後に関しては、マウスおよびキーボード作業が予測因子になることはなく、改善の傾向を示してもそれらの作業によって左右されることはなかったというのは意外なデータです。
しかし別の研究では、前腕の痛みがある人にとってマウスデバイスを週に30時間以上、キーボード作業を週に15時間以上行うと痛みの増加リスクが高まったという報告もあります。
この研究ではベースラインでの高い要求や時間のプレッシャーが前腕の痛みの増強因子でもあると心理社会的要因についても述べています。
頚部痛に関しては快適な職場環境、デスク環境が影響したそうですが、上肢痛に関しては関連性が低かったようです。
スクリーン作業は首、肩の骨格筋痛に影響を与えますが、上肢痛へは関連性が低いようです。
予防と対策
コンピューター作業による首、肩、上肢痛に関しては
・物理的、機械的要因
・心理社会的要因
この点を考えておきたいところです。
物理的にはマウスやキーボードの使用時間、痛みを抱えた人に対しての治療と休息がポイントになりそうです。
予後についてはこれらの作業が改善、増悪因子として予測できないため、症状の再発を防ぐという視点は難しい。
頚部痛はスクリーン作業、マウス操作が主に影響します。光や視野による眼精疲労なども考慮しておきたいところです。
心理社会的要因としては時間の制約や強いタスクに前腕の痛み、首肩の痛みが影響しています。
ストレスが高まった時は前腕部や首肩をストレッチしたりして緊張をほぐすことでリフレッシュできるかもしれません。