慢性腰痛の運動療法による改善のための予測因子
目次
慢性腰痛に対するエビデンスの高い介入
運動療法は慢性腰痛に対する数少ないエビデンスの高い介入方法です。
にもかかわらず、日本では徒手によるマッサージ、整体、カイロプラクティックなどエビデンスの低い方法が一般的です。
背景には運動を自分で実践することの億劫さや、目標が立てにくく管理が難しいことなどがあるように感じます。
それに対して徒手療法は満足感も高く、一時的な症状の緩和も認めやすいため「効果がある」と認識しやすいのだと思います。
この場合の「効果」は比較ではなく、主観的なものであるため良くなった人には「効果があった」と認識します。
クチコミなどは「効果があった」と感じた人と不快に感じた人の投稿がほとんどであるため、治療効果としては参考にならないのが本当のところです。
当院が運動療法を取り入れているのは
科学的根拠を元にした「効果」がはっきりと認められているからです。
しかし、運動療法は「実施」しないと何も意味をなさない為、患者さんの自発的な態度や協力する姿勢が問われるため、広まりにくいのと、実施する側が選択するスキルと指導できることが求められるため、徒手よりも高度な理解を必要とします。
運動療法の効果を高めるために
運動療法は実施することで効果を得られる治療法です。
よって効果を引き出すためには様々な環境整備が必要になります。
まずは期間か頻度かという疑問があります。
患者さんからは「何回くらい実施すべきか?」ということをよく聞かれます。
しかし、ある研究によれば週当たりの頻度よりも期間を提示した方が順守しやすく、実施しやすくなったようです。
当院でも次回の来院日までに指定した運動を実施するように伝えていますが、それは理に適っていると言えます。
また、期間、頻度の順守によって自己効力感はどちらも高まったそうです。
決められたことを実施できたということは、セルフコントロールとしての成功体験になるようです。
専門家の振る舞いは患者の順守に影響を及ぼします。
専門家の患者への疑念は頻度の順守が高まり、学習中の監視は持続時間の順守の確立が高まります。
患者の積極的な治療参加がもたらす効果
運動療法はアドヒアランス(患者が治療方針に納得して積極的に治療を受ける事)が重要であり、引き出しやすい治療環境を提供する必要があります。
治療の出席率、毎日の在宅運動の順守率、リハビリテーションのコミット率の3つの要素はアドヒアランス向上に影響します。
治療への順守は運動に対する自己効力感によって影響を受けますが、実施できた場合は痛みの強さと自己評価への障害は有意に減少しました。
在宅運動の順守は平均的な痛みの軽減と中程度の正の相関があったとのことです。
おそらく運動による介入メリットは自身の自己効力感の向上によって、患者自身が自分の治療に責任を持つという意識改革が鍵になります。
そのために介入者は信頼をベースにしたコミュニケーションによって多大な努力を必要とします。
患者の自発的な動機は運動療法の成功に必要です。
運動療法成功の予測因子
運動療法の成功は
・期間設定と来院予定
・実施頻度と介入者の疑念
・実施期間と監視
・アドヒアランス向上のための信頼構築
この辺りが明確であることが求められます。
患者側は治療計画への納得感と治療効果に対する期待感、そして症状改善の目的へのコミットがあると成功に導きやすくなります。