腿の裏側が硬いと腰痛リスクは高まるのか?
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体が硬いのは腰痛の原因?
患者さんとの会話で「体が硬いんですよ~」という言葉は一日一回は聞くフレーズです。
学生時代にやった立位体前屈テストで床に着かない...
それが腰痛の原因だ。
そう思う人は多いのではないでしょうか?
実際、FFDテスト(立位体前屈)は腰痛との相関性があるとされ、腰痛発症リスクを検査する場合に用いられます。
だからといって、ハムストリングスの柔軟性低下、剛性の増加は腰痛の原因かというとその証拠は不十分だということです。
体を前に曲げる際、ハムストリングスの伸張性は可動域に影響しますし、屈曲型腰痛患者は前屈動作時にハムストリングスの緊張が高まることも事実ではあります。
腰痛の経験の有無と屈曲動作
腰痛経験者と未経験者との比較ですが、屈曲動作からの起き上がり時に起こる腰椎と股関節の動作を分析すると、腰痛経験者は屈曲から起き上がりの時に腰椎の動くタイミングが早くなったそうです。
この時のハムストリングスは腰痛経験者でタイトネスでしたが、長さに関しては未経験者と比較しても変わらなかったそうです。
股関節と腰椎の屈曲時の違いは中等度の屈曲時に腰痛経験者は腰椎と股関節の運動比が著しく低下したが、股関節の平均可動域は変わらないことから、腰痛経験者と未経験者では動きのパターンが異なることが分かりました。
よって、腰痛経験者または腰痛患者には股関節の動きを大きく使うように指導することが腰痛発生リスクを下げる効果があるのではないかと言われています。
屈曲動作の硬さは腰痛との相関は不明ですが、腰痛経験者と未経験者での動きの差が見受けられ、痛みの原因というよりも腰痛の徴候のように考えておくことと、腰痛患者への運動指導のポイントになりそうです。
作業姿勢とハムストリングスの緊張
職業による姿勢はハムストリングスの緊張や腰椎前弯の影響因子と考えられています。
しかし、腰痛の有無に関係なくハムストリングスの長さ、腰椎の過剰前弯には仕事の種類やライフスタイルの影響を受けませんでした。
座りすぎによるハムストリングスの緊張は支持されず、腰部の伸展と骨盤回転による腰痛群は座位に比べ立位でよりハムストリングスの筋活動の屈曲ー弛緩の非対称性が大きかった。
これは脊柱起立筋非対称性とハムストリングスの緊張が動きの早期に起こることで腰痛のリスク因子になりうる可能性を示しています。
患者さんに対する説明として、
・ハムストリングスの緊張が腰痛の原因とは伝えられない
・デスクワークなどの座位姿勢がハムストリングスの短縮に影響しない
・腰部の屈曲に対して股関節可動域の拡大、股関節運動を指導する
主観的に筋肉の硬さや姿勢の悪さで腰痛の原因と判断することは、腰痛の本質的な部分から逸脱します。
筋緊張を起こす、神経系メカニズムを考えてアプローチする必要があります。