コアトレーニングは腰痛の改善に最良の方法ですか?
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腰痛の改善に腹筋運動は必要か?
腰痛の改善に腹筋指導を誘導するセラピストは少なくありません。
腹筋が弱いことが腰痛の原因になるという信念を持った患者さんも多く見受けられます。
また、体幹を強化するコアトレーニングがあたかも腰痛を改善する方法として紹介されることもあります。
腹筋は天然のコルセットのように表現するセラピストもいます。
腰痛と腹筋の関係はどのようなものなのでしょうか?
腰痛と腹筋
腰痛のある人とない人に急速な腕をひっぱる力を与えた際の腹筋の変化を調べたところ、腹筋のある人たちは表在的な腹筋の筋活動が大きくなったようです。
これは慢性腰痛患者が立位作業する時も同様に起こり、腰痛を抱えた人は深部腹筋よりも表在的な腹筋を優位な使い方をしているようです。
これが腰痛患者にインナーマッスルを強化するように指導するようになった理由のひとつかもしれません。
では、一般的なエクササイズとコアトレーニングは腰痛改善に効果があるのか?ということが疑問になります。
慢性腰痛の患者に実施した調査でコアトレーニングと一般的なトレーニングで腹筋の変化を計測しました。
腹直筋の筋厚が増加したのは一般的なトレーニングのみでした。
腰痛の改善についてはどちらの群も痛みの改善があり、有意差はなかったそうです。
また慢性腰痛の患者におこなったもうひとつのコアトレーニングと一般的なトレーニングの比較では、運動時間の増加に伴いどちらの群も障害と痛みの改善がみられたが、有意差はありませんでした。
腰痛の改善には「運動」は大事ですが、どんなトレーニングであるかは関係しないことがわかりました。
腰痛に影響する腹筋の変化
サッカー選手の内外腹斜筋の形態変化を測定したテストでは内腹斜筋の左右差があると腰痛発生リスクが2.4倍になったそうです。
腹直筋の左右差のテストでも、左右の筋長差があると腰痛発生率が高まったという報告があります。
このような非対称性の腹筋はバレエダンサー、ローテーションスポーツ選手でも見受けられ、野球やゴルフの腰痛にも関連するようです。
腹筋の左右非対称性は、ハムストリングスの緊張、股関節の片側の可動性低下なども関係があり、骨盤の安定性と股関節の回転性が腰痛予防に必要なことを示唆します。
腰痛=腹筋の強化と短絡的に指導することがありますが、腰痛予防と腰痛治療では腹筋に対する戦略は変わってきます。
腰痛治療であれば、「運動」の時間を継続的に長くする工夫が必要ですし、腰痛予防であれば骨盤安定強化と股関節の回転性能を高めるエクササイズが選択肢として考えられます。