COVID-19ワクチン接種後の肩峰下滑液包炎
目次
ワクチン接種後に肩の痛みを訴える
COVID-19ワクチン接種後に肩の痛み、挙上制限を訴える人が稀に来院されます。
ワクチンの副反応なのか、それをきっかけに肩関節周囲炎を発症したのか不明なところもあり、接骨院で判断するのは非常に難しいケースだと感じていましたが、論文がちらほら出てきました。
"2021年12月; 16(12):3631-3634。 土井:10.1016 /j.radcr.2021.08.019。
Shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA) following mRNA COVID-19 vaccination: Report of 2 cases of subacromial-subdeltoid bursitis”
51歳のタイ人女性はアストラゼネカmRNAワクチン接種後3時間後に重度の肩の痛みを発症しました。
これは不適切な接種技術によって肩峰下滑液包炎と棘上筋腱板断裂を引き起こした例だとして報告されています。
治療は経口非ステロイド抗炎症薬によって改善されたようです。
52歳のタイ人男性はワクチン接種後3日後に強い肩の痛みを発症。肩峰下滑液包炎の診断を受け、入院による治療後回復しました。
他のワクチン接種でも肩筋肉注射後の痛み
インフルエンザや肺炎球菌ワクチンでも三角筋への注射後に滑液包炎を発症したケースはスペインでの調査で45例みつかり、女性が71.1%、年齢は53.6歳が平均値でした。
特に三角筋1/3上部への注射でリスクが高くなるようです。
ここ数年、COVID-19のワクチン接種が盛んになったことで耳にするようになった接種後の肩機能障害。
割と以前からこのような症状は多く存在していたようです。
しかし、原因は注射技術と分かっており、リスク回避のための方法も確立されているようです。
ワクチンの副反応というわけではなく、物理的な問題ですのでワクチンの成分やワクチンでの反応ではないようです。
もし、ワクチン接種後に肩の痛みを感じたら
ワクチン接種後数日で痛みが引かず、強くなったり、挙上時に制限が起こるようでしたら、筋肉の痛みではない可能性があります。
五十肩様の症状だとして「そのうち治る」という考えは危険です。
五十肩(肩関節周囲炎)は長引きやすい症状です。
炎症期は数か月続く場合もあり、治療は1年ほど続くことも希ではありません。
痛みの強さが我慢できない程であれば間違いなく整形外科を受診した方が良いです。
炎症が落ち着いて、回復期であれば当院でも運動療法を行い、可動域の回復や自己効力感を高め痛みの軽減を図ります。
それと予後ですが、回復後は良好であることが多い症状です。
障害が残るようなことはありませんので、医療ミスだと騒ぎ立てるようなものでないと付け加えておきます。
感情的には不快でしょうが、症状は改善します。
不快さや怒りは痛みを増幅させますので、気持ちをゆったりと持ち、治療に積極的に参加することで早期回復できます。