押して痛いところは治療すべきか?
目次
圧痛が消えた=よくなった?
マッサージや整体で押して痛いと
「硬いですね~」とか「凝ってますね~」と言われますね。
それを手技で緩めて痛みが和らぐと「コリがほぐれましたね~」なんて
さも、症状が改善したかのように言われます。
この圧痛
たしかに痛みや症状にとって意味があるものには感じますが
ここの痛みが和らぐことが症状の改善につながっているようには思えません。
では、この押して痛いところは一体何なのでしょうか?
圧痛点とは
押圧による痛みがある場所が限定的である場合は筋筋膜症候群と言って筋の使い過ぎ、疲労の蓄積による筋の知覚過敏。
関連痛として現れる部分が限局的であり、場所が決まっています。
このような関連痛のメカニズムは脊髄レベルのニューロン収束・投射説や収束・促通説ですが、実際にヒトで起こっている感覚現象を十分に説明できないようです。
関連痛の末梢説にはMorleyの腸膜皮膚反射説やSinclairらの説があり、中枢説にはMackanzieの収束促通説やRuchの収束投射説、上位中枢説などがあります。
これらは関連痛は内臓の障害が皮膚に投射されるという説や、軸索反射によって内臓からの痛みのインパルスが脊髄に向かうと同時に軸索反射によって末梢にも向かい、脊髄線維の末端から神経活性物質を放出して局所に分布している他の神経線維を興奮させ、痛みを感じさせるという可能性を示唆したものです。
内臓との関連がある説からも考えられるのは交感神経活動とも関連があるように感じます。
圧痛点には交感神経の活動亢進による、立毛筋の収縮、発汗、血管収縮なども観察されます。
交感神経内には神経伝達物質として、ノルアドレナリンの他、ATPやNPYが共存しています。ATPやアデノシンには発痛作用があり、NPYには血管や筋の収縮作用があります。
持続的な筋緊張は血流の需要を増加させます。
そこで血管拡張のために交感神経活動を強化することになるのかもしれません。
筋緊張は痛みによって起こります。圧痛点が存在する筋は短縮時に痛みを発します。
そのため、痛みを回避する姿勢はその筋の伸張させた姿勢であることが多いようです。
これらの筋や筋膜に刺激を加えると局所短収縮反応というものが見られます。これは健常な筋・筋膜に備わった反応であり、異常な状態ではありません。
まとめますと
筋の圧刺激による痛みは筋筋膜症候群の可能性があります。
筋筋膜症候群は関連痛として圧痛点の存在があり、内臓の異常や筋に対する自律神経の活動が影響しているようにも見えます。
この痛みのよって、筋は短縮し、連続した収縮は血液の需要を増やし、血管の拡張、発痛物質の産生が起こります。
圧痛から見えるもの
圧痛は痛みを確認する上でのひとつの基準になります。
筋の損傷があれば圧痛は出現しますし、炎症箇所は触れれば痛いのは当然です。
急性期や受傷直後に圧痛を確認することで損傷箇所の特定や炎症の有無を確認できます。
慢性痛の場合は圧痛は点在します。
いわゆるトリガーポイントから
【緊張型頭痛】
前頭筋、側頭筋、喉頭筋、胸鎖乳突筋、頭板状筋、頚板状筋、僧帽筋、頭半棘筋、多裂筋
【膝痛】
中間広筋
【腰痛】
傍脊柱筋、腰方形筋
多裂筋、回旋筋
腸腰筋、腹直筋
このような痛みとその関連する特定の筋から症状を推察します。
また、自律神経の状態を推察し、生活の背景、心理的側面を想定します。
これらは根拠にはなりませんが、臨床的には必要な情報になります。
圧痛よりも大切なものは?
ここまで書いてみて思うのは圧痛点はあくまでも推察の材料であり、治癒の基準ではないということ。
もちろん、痛みが和らげば圧痛も和らぐことは多いでしょう。
しかし実際は、圧痛がなくなるまでアプローチするとなるとかなり施術箇所は多くなりそうです。
本当に必要な治療は機能の評価と機能回復です。
そして動きの指導と生活のポイント。
圧痛を感じると押したくなるかもしれないし、ほぐしてほしくなるかもしれない。
でも、そう感じたら動いて、血行を良くして、よく睡眠を取ろう
このように感じてもらえると痛みとの付き合い方がわかってくると思います。