肩の障害に姿勢指導をする必要性についての考え
目次
デスクワーカーの肩障害
肩関節の痛みを訴える患者さんで、特に受傷起点が見られない場合
・肩甲骨の機能
・肩甲上腕関節の機能
・脊柱の機能
このあたりの評価は必須かと思います。
デスクワーカーの方が日常生活の中で肩の痛みを訴える場合
僧帽筋上部の過緊張によって肩甲骨の機能が低下したり
胸部のモビリティが低下したり
どちらかというと体幹部の問題が多いように感じます。
マウス操作と肩の痛み
マウス操作が肩の痛みに影響するという見解はありますが、痛みのある人によるマウス操作がより負荷が大きいものになるという方が臨床的には近いイメージです。
首の痛みや肩こりが元々あり、長時間のデスクワーク(DVT作業)が続くことで肩の痛みを増強させる感じでしょうか。
特に母指屈筋群や回内筋などの過使用による緊張は肩甲骨や上肢の動きを妨げます。
回旋腱板では、肩甲下筋や前鋸筋の促通低下や僧帽筋上部の過緊張によって上腕骨の並進運動が妨げられることがメカニカルストレスに繋がることもあるように感じます。
猫背は肩の障害の原因か?
デスクワークは前傾姿勢になるため、肩関節を前方に向けることで頚椎の前弯を過剰にし、肩の外転、挙上を制限しやすくします。
胸椎のモビリティ低下は肩の外転筋の過剰な緊張を生じさせ、僧帽筋中部・下部や広背筋のはたらきを低下させます。
猫背やスウェイバック姿勢などの不良姿勢が肩の制限になるかどうか?というところは、それが制限している場合もあればそうでない場合もあると言ったところです。
脊柱のモビリティは肩関節の運動に重要な要素ではあります。しかし、脊柱のモビリティ減少は不良姿勢が原因とするには少し暴力的に感じます。
肩甲骨間部の運動は肩甲挙筋、大・小菱形筋、肩甲下筋、前鋸筋などの協調的な運動がメインです。
猫背だからこれらが協調的に動かないということはなく、むしろ猫背の人にとってこのような動作は苦手になることが多いという印象です。
それはむしろ脊柱のローカルマッスルの活動低下などへの着目が必要ということにもなります。
デスクワーカーの肩障害と姿勢指導の目的
デスクワーカーの肩障害はミクロで見るよりもマクロ的に見た方がいいのは上記のようなことがあるからです。
スポーツ選手や外傷などの場合は肩単体で見ても、脊柱や下肢の運動機能や筋力が高いためになんとかなります。
しかし、一般生活者の場合は筋力、活動量などが少なく
そのため、肩だけでなく、体幹部自体を安定させないと上肢機能が高まりにくい場合もあるのです。
肩のローカルマッスルは体幹部のグローバルマッスルの強さによって安定性が違います。
これによって姿勢指導などを取り入れる治療院が多いのです。
しかし、姿勢指導の目的が姿勢の悪さが痛みの原因という発想になってしまうことが多々あります。
それは本質的ではありません。
姿勢指導の目的はあくまで肩のローカルマッスルの運動性を高めることです。
姿勢を良くするのではなく、姿勢で肩をコントロールできることが重要です。
肩の機能障害は運動療法が推奨されていますが、こういう理由があるからです。
姿勢矯正、骨盤矯正、筋膜はがしが肩の障害を改善できるのは可動域を一時的に回復することのみです。
デスクワーカーの肩障害を改善していくためには適切な介入目的を伝えて指導したり介入したりする必要があります。