坐骨神経痛かな?と思ったら
目次
接骨院レベルで坐骨神経痛をどのくらい鑑別できるか?
坐骨神経痛は接骨院、整体院ではよく来院される症状のひとつです。
ホームページや広告でもセンセーショナルな文句がよく見受けられます。
しかし、坐骨神経痛という症状は非常に鑑別評価が難しく、治療も簡単なものではありません。
五十肩もそうですが、整形外科レベルの鑑別が必要な症状です。
いくつか疾患が考えられます。
・腰椎椎間板ヘルニア
・変形性関節症の骨棘
・脊柱管狭窄症
・脊椎すべり症
これらはRed flagsといい最も注意が必要な特異性疾患です。
接骨院でこのような症状の患者が来院された場合
・SLR(下肢挙上テスト)による坐骨神経痛の感度、交叉下肢挙上テストによる特異度
60°以下の挙上、それ以上で疼痛発現と対側下肢挙上時に患側の疼痛発現
・座位下肢挙上
座位での下肢挙上90°
・スランプテスト
スランプ座位にて頚部屈曲時の放散痛
・バルサルバサイン
神経学的検査
・アキレス腱反射、膝蓋腱反射 減弱または消失 しかし急性期、中枢レベルでは亢進
・デルマトーム
・筋力低下
精査できることはここまでです。
これらの臨床的評価が6週間以上持続する場合は画像診断が重要になります。
梨状筋症候群は坐骨神経障害か?
梨状筋は骨盤帯深部の筋です。
梨状筋症候群とは骨盤出口で坐骨神経痛を含む末梢神経の絞扼による侵害刺激が疼痛や痺れを惹起させる病態です。
教科書の範疇では「坐骨神経痛」として終わっていますが、実際の臨床では後大腿皮神経や下殿神経などの症状も多く、下肢のどの神経を絞扼しているかを特定するのは非常に困難です。
これを分類するための臨床的徴候から割合を検出した論文があります。
後大腿皮神経(S1~S3)は感覚枝のみを有します。
そのため殿部下部から大腿後面における神経領域に疼痛および感覚障害を認めます。
総腓骨神経(L4~S2)と脛骨神経(L4~S3)は感覚枝と運動枝を有します。
前者は下腿外側から足背における疼痛および感覚障害と長母趾伸筋の筋力低下を認めます。
後者は下腿後面から足底における疼痛および感覚障害と長母趾屈筋の筋力低下を認めます。
上殿神経(L4~S1)と下殿神経(L5~S2)は運動枝のみを有し、
前者は中殿筋の筋力低下や萎縮
後者は大殿筋の筋力低下や萎縮を認めます。
これらの鑑別基準から割り出すと総腓骨神経88%、後大腿皮神経84%、下殿神経12%、上殿神経8%でした。
梨状筋症候群は坐骨神経障害だとされていますが、総腓骨神経と後大腿皮神経の障害だということを認める結果が出たようです。
原因の究明は整形外科で、回復のお手伝いは運動療法で
このように症状は複雑であり、絞扼された神経を特定するのは接骨院では困難です。
まずはRed fragsに該当しないかどうかを明確にすることが安全な治療への第一歩になります。
一度、整形外科を受診しするか、接骨院での臨床所見で判断するかですが、ここに記載した通り6週間以上の症状は迷わず整形外科を受診してください。
その上で該当しなければ、運動療法が推奨されています。
クラムシェルエクササイズなど、股関節や大殿筋への運動は緊張を緩和させ、回復に通じていると言われています。