股関節痛予防には筋力か?姿勢安定か?
目次
股関節症状の見極めの困難さ
股関節の症状で見極めが難しいのは、股関節周囲は複雑で筋や腱、神経や血管がたくさんあることです。
その中でも関節自体に痛みがある場合は、
・可動域の制限
・エンドフィールのつまり感
・歩行時や過重時の疼痛
このような症状が見受けられます。
しかし、鼠径部痛や臀部痛も併発している場合もあります。
また、多くの股関節障害の診断基準は未だ明確ではないものが多く
変形性股関節症や大腿骨寛骨臼インピンジメントなども画像所見や観血的な手段を用いて分かることがほとんどです。
股関節の構造
股関節は球関節といって、大腿骨側はボール状の骨頭を有し、骨盤側は寛骨臼というカップが受け皿になります。
可動は屈伸、内外転、内外旋です。
3つの運動軸を持つ多軸性関節のため、自由度が高いのが特徴です。
股関節の関節包靭帯は捻転機構といって立位では大腿骨頭を取り囲むように輪状の環を形成し、伸展時は螺旋状になり骨頭を押し込むはたらきをします。
屈曲時は弛緩し、骨頭を押し込む作用は低下し、運動性の度合いが高くなります。
この弛緩肢位にて骨頭上方の関節包または関節唇が骨部分と衝突するとAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)を起こします。
股関節の運動は膝関節の屈曲、伸展などの肢位の変化でも残りの2軸に作用する筋収縮に変化があります。
運動軸が多く、靭帯機能も強固な股関節にとって損傷の予測因子はどういったものが考えられますか?
関節への過剰な負荷は筋力の弱さや姿勢制御が関係するのでしょうか?
コアスタビリティと下肢の損傷
下肢の酷使による筋骨格損傷の原因はコアスタビリティの不安定性、動的姿勢制御、コア神経筋制御、固有受容感覚および機能運動などの低下が要因のひとつという考えがあります。
これらは統計的にも調査されていまして、スタビリティ強度の低下と股関節の屈伸可動性の低下は下肢の損傷リスクを高めます。
股関節の外転筋力の不均衡は非接触性の急性下肢損傷の強いリスク因子になります。
このように股関節の障害予防として下肢または姿勢安定性のトレーニングは重要です。
では、筋力テストは損傷リスクの予防または治療効果としての基準になるか?という考えがあります。
この考えについては高負荷、低負荷に限らず筋力の強弱で損傷リスクと関連性がないことが分かっています。
筋力よりも姿勢安定
股関節の損傷リスクを回避するためにはバランス感覚や支持機能を高めるエクササイズが不可欠ということになります。