仙腸関節の痛みへの知識と考察
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正確な判断が難しい仙腸関節の評価
仙腸関節痛は腰臀部痛の15~30%程度と言われていますが、画像所見に乏しく、明確な診断が不十分な症状です。
PSISの圧痛や仙腸関節の動揺、周辺靭帯などの軟部組織への放散痛が判断の基準になります。
多くの徒手療法家は触察と徒手による機能テストのみで判断するしか方法がありません。
よって、仙腸関節およびPISIや仙結節靭帯に圧痛や自発痛を感じる場合に仙腸関節障害としてしまうセラピストは少なくないでしょう。
科学的な評価というのは情報(客観的事実)を元にした仮説になります。
多くのセラピストが選択するのは主観的で感覚的な事実と事前情報による知識のすり合わせです。
ちなみに腰痛の患者の80%が仙腸関節やPSISに痛みを訴えます。
仙腸関節を得意とした治療院や仙腸関節障害を専門的に扱うセラピストはそのバイアスにかかっていることに気づいておらず、仙腸関節障害であることを信じてアプローチします。
しかし、非特異的な腰痛では診断やアプローチに誤差があれど痛みの改善をすることができるため更にそのバイアスは強化されます。
では、客観的事実ではどのようなことが仙腸関節障害と見なされるのかを調べてみたいと思います。
圧痛とレントゲン所見
仙腸関節障害の多くは不確定な要素が多く、仙腸関節障害と診断され治療した群とそうでない腰痛群での有意差は圧痛とレントゲン所見だったという報告があります。
圧痛は立位でPSIS、座位で仙結節靭帯に見受けられた。
仙腸関節痛はone finger testで確認でき、広範囲ではなく局所的にPSIS付近に発現します。
レントゲンでは仙骨の傾斜角が低位であり、座位ではL4/5、立位ではL5/Sの椎体間角度が高位であった。
立位時は仙骨のcounter nutation、座位ではnutationによる負荷が後仙腸靭帯、仙結節靭帯にかかることで圧痛が増強されていることが考えられます。
また下位腰椎の後弯域が仙腸関節障害では減少することがレントゲン上で確認されているようで、腰部の屈曲時の後方の伸張性に影響を受ける可能性が高い。
仙腸関節痛のメカニズム
仙腸関節痛は後仙腸靭帯域の伸張ストレスや負荷による機能障害が疼痛を誘発するものと考えられます。
他の非特異的腰痛とは明確に区別できる徴候として
骨盤の動揺時の疼痛やOne finger signなどが挙げられます。
しかし、仙腸関節痛は疼痛領域を拡大すると正確性が低下し、痛みの強さとしては坐骨結節付近の痛みに特徴があるという報告があります。
このことからも、後仙腸靭帯または仙結節靭帯への負荷が疼痛の原発であると考えることができます。
慢性化すると改善が難しくなることも報告されており、早期に鑑別し、適切な対処をすることが求められます。
運動療法としては骨盤帯の支持機能を高める目的のエクササイズ。
腰仙部の後弯可動性を高めるエクササイズなどが改善の指標ともなるためポイントです。