しびれを訴えた患者に対する注意
目次
手足のしびれが難しい理由
手足にしびれを患者さんが訴える場合、どのように患者さんに説明し、対処すれば良いのでしょうか?
簡単な検査をして問題がないかのように治療をしていないでしょうか?
しびれという表現は痛み同様に患者さんによって様々な表現をします。
例えば強張りのような感覚もしびれと表現しますし、皮膚がチリチリするような異感覚をしびれと表現したり
正座をした時のしびれも、椎間板ヘルニアによるしびれも
みんな「しびれ」です。
ただ、痛みよりもしびれの方が危険な徴候である場合が多く、そのことを理解して治療にあたっている治療院は少ないということです。
カイロプラクティックや整体などをやっていると脊柱管レベルのしびれと末梢神経レベルのしびれを混在していることも多々見受けます。
椎間板ヘルニアは坐骨神経痛とは違いますし、下肢の末梢神経症状は筋による神経絞扼以外にもMoton病や糖尿病によるしびれも考えられます。
まずはしびれを分類することからはじめなければなりません。
しびれを分類してみよう
しびれを起こす症状を分類すると
①大脳・脳幹・脳神経
②脊髄・脊髄神経根
③末梢神経
④血管
⑤薬剤などの化学物質
⑥心因性
このように分けられます。
また
脊髄疾患、神経疾患、代謝異常など危険な難治性疾患である場合もありそれぞれの病態を理解しておきたいです。
①大脳・脳幹・脳神経では脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの血管や腫瘍性疾患があります。また、多発性硬化炎、脳炎、三叉神経痛などもしびれを引き起こします。
血管損傷や障害によって脳にダメージを来たした場合や、脳神経に何らかの異常が生じた場合です。
当院にも以前、三叉神経痛の症状で来院された患者さんがおりました。脳神経の専門医を受診してもらったところ、三叉神経痛だという事が判明し、治療方針を変更したことがあります。
②脊髄·脊髄神経根によるしびれは、脊椎症、脊椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症、脊髄炎など脊柱管内または神経根出口での疾患や障害によるしびれです。
Red flagsであるため、接骨院、整体院で「治療」として行うことは禁忌です。
症状のグレードにもよりますが、椎間板ヘルニアなどは急性期ではかなり酷いしびれが生じても6ヶ月くらいで自然寛解するケースもあり、医師と相談しながら保存的治療の可能性も模索出来ると思います。
③末梢神経によるしびれは神経根によるしびれと混同されやすいですが、
·単神経障害
·多発単神経障害
·多発神経障害
と分類されます。
末梢神経障害はニューロパチーと呼ばれます。
手根管症候群のような圧迫による神経障害もあれば、糖尿病や飲酒の過剰による神経の破壊、損傷によるものもあります。
接骨院などで治療対象になるのは、筋や筋膜の硬結や攣縮による神経絞扼や血行不良による場合です。
しかし、接骨院などでは何によって神経絞扼が起こっているかを判断するにはエコーで目視するか、徒手検査によって除外しながら推論するしか方法がありません。
何れも、知識と経験値が必要となります。
坐骨神経痛、梨状筋症候群、下殿神経障害、上殿皮神経障害などを区別して推察するには支配領域、筋の圧痛点、筋の機能、並走する血管を理解しておく必要があります。
このような違いを骨盤のゆがみ、姿勢不良、血行不良、ストレスで片付けられるはずがありません。
また
帯状疱疹=単神経障害
サルコイドーシス=多発単神経障害
ギラン・バレー症候群=多発神経障害
といった感染症や免疫疾患もニューロパチーを発症します。
しびれがある症状は
しびれを訴えた場合は、危険度が高いものから除外する必要があります。
私たちが判断するのは治療可能か?ではなく、どの医療機関にコンサルトすべきか?と、その時期です。
確かに患者さんは治して欲しいと頼ってきます。
しかし、しびれのような症状については気安く治せるものではないという認識を患者さんにも伝える必要があります。
その上で検査の必要性、今の症状がどんな状態から起きているかという推察、最悪の事態に対するフォロー
ここまでがマストではないでしょうか?
接骨院で起こる事故は施術による悪化よりも、正しく判断されなかった事による、慢性化や残存症状です。
しかし時が経てば、症状は残れど慣れや適応によって酷い時期よりはマシになります。
それを自分が治した気になってしまうセラピストが一番危険な気がします。