坐骨神経の解剖学と臨床上の考察
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坐骨神経
坐骨神経痛は割とメジャーな症状名であり、一般患者にも浸透しています。
しかし最近では深臀部痛と呼ぶ方が医学的には主流にもなっているようです。
坐骨神経は手の親指くらいの太さがあり、L4-S1に由来します。
大坐骨孔を後大腿皮神経と共に抜けて大腿後面から足底まで続きます。
大腿後面の筋を支配しますが、単体での支配は大内転筋のみです。
知覚領域は大腿後面です。
膝窩で脛骨神経と総腓骨神経に分かれ、下腿の筋と知覚を支配します。
坐骨神経はこの脛骨神経と総腓骨神経の要素を含んでいるため、膝の屈筋は脛骨神経が大腿二頭筋長頭、半腱半膜様筋を総腓骨神経が大腿二頭筋短頭を支配します。
坐骨神経由来の末梢神経障害
坐骨神経の絞扼による末梢神経障害は
総腓骨神経障害 88%
後大腿皮神経障害 84%
下殿神経障害 12%
上殿神経障害 8%
という報告があります。
複合した症状では
後大腿皮神経+総腓骨神経障害 64%と最も多く、その他の組み合わせでは4%ほどでありました。
股関節屈曲時に必要な坐骨神経の長さは64mm必要となり、股関節屈曲時の坐骨神経と総腓骨神経の神経伝達速度は増加します。
これらの事からも坐骨神経の評価は下肢の末梢神経と共に評価しなくてはなりません。
坐骨神経と自律神経
坐骨神経は交感神経の支配を受けます。
その証拠として、坐骨神経障害は発汗障害を呈します。
感覚異常部位の発汗が増す場合と発汗が減少する場合があり、これは感覚異常がある場合のみにおいて起こる徴候です。
解剖学的には文献、研究が乏しく、L3-L5前面および大腰筋起始部の内側で腰動静脈と最下腰動脈の前を交感神経枝が走ります。
これらは下部へ進むほど神経幹の数が少なくなるが、少なくとも3~5の交通枝を持つことが観察されています。
坐骨神経の機械的因子または炎症的因子によって交感神経が刺激され、汗腺は直接的な神経支配を受けるが表層は交感神経、深層は副交感神経が支配します。
この時交感神経は電気刺激、温度変化に過敏で副交感神経は鈍感であり、坐骨神経障害の皮膚温度変化や電気刺激のような異常感覚は交感神経に作用します。
しびれは痛みより表層感覚の神経線維を介した症状であることからも一致します。
臨床上の考察
坐骨神経障害は大きく捉えず、末梢神経の支配する筋と知覚領域を踏まえて判断する必要があります。
また、しびれや冷感といった異常感覚は、交感神経を刺激します。
痛みを刺激させない程度の動きをサポートしながら、交感神経の抑制を図り、自律神経のバランスに働きかけるように呼吸や思考を利用する必要もありそうです。