首の後ろの怠さや重さ~上部頸椎
目次
頸椎の動きの半分を占める部位
首の痛みを訴える患者さんの症状の改善のために上部頸椎について考えることは極めて重要です。
後頭骨~C1~C2までを上部頸椎と呼びます。
後頭骨はC1の上関節窩と環椎-後頭関節をつくり、C1-C2では正中上に正中環軸関節、外側には外側環軸関節があります。
これらの関節は頸椎の回旋運動の約半分を担います。
軸椎と呼ばれるC2の椎体を担う歯突起の前面が側に頭部が回旋します。
上部頸椎は後頭下筋群が後方と側方にあり、頭部の安定と可動性の微調整を行います。
頸部に痛みが生じると、この部分は痛みによって緊張し、動きの制限を強化するために後頭下筋群に緊張が生じます。
頸部の回旋抵抗と副神経
頸部の回旋運動を制限するのは僧帽筋の上部線維と胸鎖乳突筋の過緊張です。
これらの収縮を司る神経は副神経という脳神経XIです。
副神経は迷走神経(脳神経X)と共に働きます。
恐怖や緊張などが起こると、迷走神経の副交感神経が抑制され、副神経も興奮します。
これにより、頭部がすくみ肩が挙上することで回旋しにくくなります。
この状態で上部頸椎は胸鎖乳突筋による前下方への引っ張りに対し、拮抗します。
顎と上部頸椎
上部頸椎の運動は顎とも関係があります。
上顎は環軸-後頭関節により開閉します。そのため、噛みしめや歯並びの影響を受けます。
胸鎖乳突筋は上顎を固定し、開閉時の安定に寄与します。
噛むという行為は上顎を固定し、下顎を上下、前後、左右に動かします。
上部頸椎の動きにくさは頭部を前下方へと引っ張り、前頭姿勢を助長します。
不良咬合や前頭姿勢は口呼吸が影響するとも言われています。
鼻呼吸を意識的に行うことで上顎の位置が安定し、舌も上顎に着きやすくなります。
目の動きと上部頸椎
脊椎動物にとって目の動き(視線と視野)はとても大切です。
背骨のある生き物は目の動きの方向に頭部を向ける性質があります。
これは獲物や外敵(捕食対象)や性的(生殖対象)な対象を見つけることに役に立ちます。
また、目よりも原始的な感覚が嗅覚であり鼻呼吸が重要なのはそうした観点からも考えることができます。
デスクワークなどの狭い視野で奥行きのない画面ばかり見ていると、上部頸椎はあまり動くことができません。
目の動きだけではなく、眼圧や光の強さでも後頭下筋群は収縮します。
そのため、眼精疲労は頭頸部の疲労を助長する原因にもなりえます。
上部頸椎の運動
上部頸椎はこのように日ごろから緊張しやすい部位のようです。
目や鼻、顎など外界との接触部位との関連も強く、生理的な活動にも欠かせません。
しかし、意識的にはたらく場所というよりは無意識にはたらく場所であるため、なかなか運動を随意的に行うのは難しい場所でもあります。
ここで紹介するエクササイズは上部頸椎の運動を高めるものです。
眼精疲労や頭痛、後頭部の鈍重感などの症状がある場合、首の可動域が狭い、首が凝るといったものにも効果的です。