顎関節症と枕
目次
顎関節症とは?
顎が痛い、噛むと痛い、口を開くと音がする、口が開かないといった顎にまつわる症状は顎関節症と言われます。
歯科、口腔外科領域なので、生活に支障が出るようであればどちらかに受診することをお勧めします。
ただ、顎を動かす筋肉の症状である場合は頸部の緊張や咀嚼筋の問題であり、当院でも対応しています。
顎の関節は上顎は下顎との関節面と後頭骨と環椎の関節面でも動きます。
そのため頸椎にストレスがかかると顎の開閉にも影響があるのです。
最近はマスク生活や人との会食なども少なくなり、大きく口を開けて笑ったり、表情豊かにすることも少なくなりました。
こういうことからも顎の筋肉に影響します。
嚙み合わせに問題がない
顎の関節自体は正常
でも、顎が痛む
そんな場合は頸部の筋緊張や表情筋の問題を疑い、アプローチしてみるのも選択肢かと思います。
朝はすっきりと起きれていますか?
顎の痛みは意外と起床時に強く感じることが多いようです。
就寝時に噛みしめや歯ぎしりなどをしていることが考えられます。
しかし、それと同じく首がうまく休まっていないなんてこともあるようです。
側臥位での就寝姿勢では対側側の胸鎖乳突筋の筋活動が過剰になるようです。
これによって起こる左右非対称性の胸鎖乳突筋筋活動は片側の胸鎖乳突筋過活動を引き起こし、筋緊張性の下顎障害を招く恐れがあるようです。
筋原性頭蓋頸部下顎機能不全と呼ばれる症状がこれに値しますが、この症状を有する患者の多くは頸部の傾斜、屈曲時の胸鎖乳突筋の筋電図が健常者とは違う様相を呈します。
このことから胸鎖乳突筋の過活動を抑制し、日ごろから頸部屈筋のエクササイズを取り入れるなどを指導する必要がありそうです。
枕と胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋は咬合障害において、筋の活動が顕著に高まることがわかっています。
また、前頭姿勢の人にとっては、正常姿勢の人よりも枕は筋の変化が起こりやすいものです。
前頭姿勢の人の場合、枕の変化は僧帽筋中または下部線維の活動が高まる要素になります。
また、胸鎖乳突筋と僧帽筋上部は類似した活動を示しますが、僧帽筋上部のみ枕によって活動が低下したようです。
正常な姿勢の人では大きな変化がないことから、前頭姿勢の人の場合は枕で首肩の活動に変化があるようです。
胸鎖乳突筋の活動を低下させるには、枕の高さよりも頸部を支持できる枕の形状だと言われています。
枕の高さはやはり僧帽筋の活動に影響するようですが、胸鎖乳突筋の活動には大きな差がないようです。
但し、頸部支持枕の場合は胸鎖乳突筋の活動低下が見られます。
よって咬合障害の場合、頸部支持枕による胸鎖乳突筋の活動を抑制するためのひとつの手段になりえます。
筋性由来の顎関節症への枕指導の重要性
まずは顎関節の症状を評価し、筋性由来であること
筋原性頭蓋頸部下顎機能不全の見地から考察し、胸鎖乳突筋の左右差、圧痛、咬合障害を見極めます。
治療としては
・胸鎖乳突筋の左右差に対するアプローチ
・上部頸椎のROM制限へのアプローチ
・枕指導
この3点は今回の調査の結果からも重要だと思われます。
背景として、慢性的な肩こりや頸部痛、歯ぎしりなども起こしていないかを質問しておくことは大事ですが、日常の中で胸鎖乳突筋へ介入することになるとストレッチか姿勢指導くらいになります。
胸鎖乳突筋は僧帽筋と同様、副神経支配であり副交感神経の影響を受けます。
過度な緊張状態を日中に過ごしている人、頸部の回旋運動が少ない人も過緊張を起こしやすい筋です。
よって、睡眠の満足度、休息が重要なのです。
枕指導による安眠効果、睡眠満足度の上昇は顎関節症の治療に必要だと考えます。