ウォーキングの本当の効果とは?
目次
結構、歩いているんですけどねぇ
患者さんに運動しているかを聞くと
「結構、歩いているんですけどねぇ」と答える方が多いです。
歩くというのは何かのついでで出来ますし、負荷も高くないために日常に取り入れやすい運動でもあります。
しかし、歩いている割には効果を実感できていない人も多い気がします。
当院でInBody測定をしていてもやはり歩くだけではあまり変化がないという人がいます。
歩くこと自体は良いことで間違いないのですが、歩いても効果が感じないのはなぜでしょうか?
数字に反映される、体力の向上や運動機能の向上、痛みや疲労感などの感受性低下など何かしらの効果を実感できるように歩くにはどのようにすべきでしょうか?
歩くと筋肉量は増えるのか?
筋肉量を増やすには負荷が必要になります。
ウォーキングだけしても負荷が少なければ筋肉量の増加にはつながりにくいのが事実です。
速度を早める、重りをつける、坂道や砂地を歩くなど
通常の歩行ではない状況にする必要があります。
会社の通勤を一駅分歩くくらいでは、筋力を増加させることにつながりにくいのは負荷が少ないためです。
一日1万歩歩いたとしても
負荷が低ければ筋肉量は増えにくいため、数値的な変化は見込めません。
名古屋大学の研究によると
10週間で1日30分、週2~3回、一日平均1万歩を目標とした調査では5mの最大歩行速度と椅子の立ち座りに前向きな変化がありました。
これに自重負荷のレジスタンストレーニング(シッティングスクワット、カーフレイズ、脚の横上げ、上体起こし)を45回づつ加えると筋肉内脂肪と筋肉量に変化と関連性が見えたそうです。
ウォーキングのみでも筋肉内脂肪は減少が見られたものの、レジスタンストレーニングを加えるとより筋肉内脂肪が減少し、筋肉量が増えることに比例して筋肉内脂肪の減少量が増えたとのことでした。
筋肉内脂肪は2型糖尿病、運動機能低下の関連因子でもあり、この数値がウォーキングによって減少することは効果として認めても良いと思います。
しかし、10週間のウォーキングでは皮下脂肪量、筋肉量には大きな変化はなかったようです。
ウォーキングにおける効果は2型糖尿病や運動機能低下を予防するためのリスク軽減効果に重きを置くようにすると良いかもしれません。
ウォーキングにおける体脂肪の燃焼
よく20分以上の持続的な運動は脂肪を燃焼させると言われます。
前述した研究では皮下脂肪の燃焼効果は低く、10週間程度の継続ではそれほど効果があるとは言えませんでした。
ノーマルウォーキングでの脂肪代謝の上昇は6カ月以上の継続から見られるようになったと、滋賀大学の研究にあります。
この研究はストックウォーキングとノーマルウォーキングの比較であり、ストックウォーキング(ノルディックウォーキング)はノーマルウォーキングに比べ、全身の活動量が増える一方で足腰の負担軽減や転倒予防などの観点からも高齢者のウォーキングとして推奨されます。
ストックウォーキングは3カ月目から体脂肪の代謝が高まり、ノーマルウォーキングよりも代謝機能の向上が早かったようです。
しかし、ウォーキングはどちらにしても体脂肪の代謝は高まり(期間は3-6カ月要する)、体重、腹囲、BMI、体脂肪率は低下するようです。
また、ウォーキング中の血清脂質の低下から高脂血症や動脈硬化リスクが低下します。
それ以上にストックウォーキングは運動機能が3カ月を越える頃からノーマルウォーキングの効果を大幅に上回ります。
これは肩、胸、上肢の運動が加わることで酸素摂取量が高まるためだと言われています。
これらのことからウォーキングによって体脂肪が減少するのは、継続的なウォーキングによって運動機能が高まることで脂肪代謝の効率が上昇するためということが分かります。
まずは体力や運動機能を高め、心肺系を働かせ、血中の脂肪を低下させていくことで脂肪を消費しやすい体質になることが必要不可欠です。
まずは土台づくりから
ウォーキングは筋肉量を増やす、体脂肪を減らすという直接的な効果よりも体力の向上や代謝の向上といったベースの部分を作るのに最適な運動です。
まずはウォーキングで体力をつけ、その後にストレングストレーニングやジョギングに移行することで筋肉量や体脂肪量に反映されるようになっていきます。
よって、腕を振ったりして多くの筋肉を動員することも歩くときに意識してほしいポイントです。
とにかく筋肉量は負荷が必要ということです。体調や体力に合う負荷を考えながらトレーニングするとなると専門的な知識が必要になります。
特に当院ではやせ型、虚弱型の方へのトレーニングも行っていることが特徴です。
運動が苦手、運動が嫌い
そんな方でも続けられるエクササイズを提案し、痛みにくい体、疲れにくい体にしていきましょう。