初動の遅れが長引く腰痛になる
目次
患者
30代女性 デスクワーク 趣味はダンス
急な腰の痛みに襲われ、一か月半後に来院。
その間、整骨院、鍼灸院に通院したが改善せず。
症状は仕事中、椅子に座って作業していると数十分で痛みで座っていられなくなる。
整骨院ではコルセット着用を勧められ、作業中はコルセットがあれば長時間になっても作業はできる。
しかし、痛みを感じると座っていられないほどの激痛が続くようでした。
整骨院の診たては
骨盤がゆがんでいるとのことでストレッチと電気治療
検査
ケンプテスト(椎間関節障害)陰性
神経障害の徴候なし
屈曲は可能であるが恐怖感がある(運動恐怖感)
友人のことで精神的ストレスが強かった
右の多裂筋~右臀部、右大腿部に張りを感じる
右腰部の筋筋膜性腰痛または非特異的腰痛という2つの視点から考察。
◆選択したプラン
料金都度払いにて、3度来院。現在も継続中。
改善策と治療戦略
非特異性であることを伝え、姿勢指導と屈曲できるようトレーニングをし
運動恐怖と座位持続性を向上させることを最優先にしていきます。
同時に多裂筋、腹斜筋などをトレーニングして腰部安定性の維持を目指す。
通院記録
1回目
各種検査をした上で主な損傷や障害は確認できませんでした。
痛み始めは急な痛みで動けなかったこと、痛みを抱えながら治療に行くこともできずに1週間テレワークをしていたこと、3週間経って痛みが増してきたため、近所の整骨院に通院したことなどから、急性腰痛後の対処が適切でなかった可能性があると推測。
本人に痛みの原因を問いかけると、腰椎に問題が起こったのではないか?との事から、それは誤認の可能性があることを伝える。
動くことは出来ているが、じっと座っていることが辛いため、どのくらいで痛みを感じるかを聞いてみるとコルセット着用で5時間くらいは座れるが、コルセットなしだと1時間程度とのこと。
・50分くらいにアラームを設定し、鳴ったら5分間の運動またはブレイクを入れること
・毎日、壁伝いに身体を曲げる練習をすること
・痛くなったら呼吸エクササイズを行うこと
これらを指導しました。
10日後に2回目の来院
1時間は座っていられるようになったこと
体を曲げることも怖さが減少
しかし、ダンスを思い切ってやってみると腰の右側に痛みが出ました。
これは初回にあった
右多裂筋~右臀部~右下肢の張りが運動によって感作されて起こる痛みと判断しました。
3回目
前回から2週間が経過しました。
当初の腰痛に関しては8時間デスクワークも出来るようになりましたが、ダンス後にはまだ右の腰に痛みが起こります。
ダンスのあとにアイシングをすると翌日の痛みが減ることから、アイシングは一定の効果があるようでした。 (患者本人が試して感じた効果)
腰だけでなく、臀部~大腿部にも広がる痛みであるため、外側大腿皮神経周囲の血流が低下していることも考えられ、皮神経へのモビライゼーションと腹斜筋など体幹部の筋トレを指導しながら2週間ごとに通院してもらっています。
施術後記
急性期は早めの職場復帰がカギになりますが、この方の場合
・リモートワークであったこと
・痛みを抱えながら忙しいために休息できなかったこと
・友人のことで精神的ストレスが重なったこと
などが長期化する原因になっている可能性がありました。
初動の遅れが腰痛を持続化し、治療を行っても思ったよりもスムーズにいかなくなっている印象でした。
こういう場合は
まずは、最も支障がある仕事への影響を減らすことを第一に考えます。
痛みに対する姿勢指導はどんな姿勢を取るか?よりも、じっと座りつづけない工夫が大切です。
アラームで管理することで座りすぎを減らすことができたために、疼痛が起こる前に姿勢を変えること、運動をすることで座る事による痛みには対処できました。
結果としては1ヶ月半痛みが改善されなかったことに対し、10日後には座っていられるようになり、その2週間後には仕事中の痛みはほぼ気にならないレベルにまで改善されました。
今後の課題は好きなダンスを続けるための運動療法と動きのトレーニングを指導していきたいと考えています。