痛みとだるさの尺度~肩から背中にかけての不快さ
目次
患者
50代女性 趣味水泳
毎年1~2回左肩~上肢にかけた痛み
座っている時がもっとも酷い
車の運転も辛い
検査
疼痛部位は棘上筋後部線維付近~肩甲骨内側縁
肩甲背神経またはC6、C7領域に痛み
改善策と治療戦略
頚部のエンドフィールで疼痛が誘発され、上肢下垂位でだるさ。
筋力や知覚は正常であることから、神経の伸張痛の疑い。
神経の絞扼箇所と血流の促進にて改善を目指す。
ゴールは疼痛の改善と長時間の座位が可能になること。
通院記録
1回目~4回目くらいまでは痛みが強くなることがしばしば起こる。
左のだるさをNRSで表現すると9くらいになるほど不快感を示す。
アプローチ後は3ほどの不快さに変化。
1ヶ月ほど通院していくと痛みを感じる時間が短くなる。(通院5回ほど)
三角筋後部~第3指に痛み
立位ではほぼ消失するが座位で出現
NRS 3
肩甲骨の運動を指導
来院2か月でデスクワーク時のだるさは感じるものの不快さは和らぐ。
7回目でほぼ痛み、だるさは消失。
しかし、2か月後に水泳のあと再発。
腕の回し方や肩甲骨の動きを誘導。
半月ほど(3回目)には消失。
それから、脊柱の伸張トレーニングや体幹のバランストレーニングなどを指導しながら
初診から8か月後
プールで3500m完泳できた。
1年後には個人メドレー完泳。
胸郭のモビリティを高めるエクササイズや上半身と下半身の連動性を高めるトレーニング
現在、痛みは1年以上出ていない。
毎月、InBody測定しながら体調管理をしている。
施術後記
上肢の痛みやだるさはデルマトーム上に症状が出やすい。
腕神経叢以下のC6,C7が関わる支配神経は以下の通りです。
外側神経束、内側神経束 筋皮神経(C5,C6,C7) 尺骨神経(C7,C8,T1) 正中神経(C5,C6,C7,T1)
後神経束 腋窩神経(C5,C6) 橈骨神経(C5,C6,C7,T1)
肩甲背神経(C5)鎖骨下筋神経(C5)肩甲上神経(C5,C6)長胸神経(C5,C6,C7)肩甲下神経(C5,C6)
胸背神経(C6,C7,C8)外側胸筋神経(C5,C6,C7)
このような神経がどのような経路上にあるのかを精査すること。
絞扼が起こるとしたら、どのような箇所で起こるのか?
そういった予測が必要になります。
末梢神経も神経伝達には血液が必要なため、神経には並走して動脈があります。
筋収縮はそれらの血流を促進しますので、筋の状態をみて運動または徒手による介助的なエクササイズ、愛護的なマニュピレーションを行うことにしました。
また、今回は痛みではないが不快さが我慢を越えるレベルでした。
痛みと不快さはイコールのように思えますが、実際は少し違います。
そういったニュアンスの違いを共有しながら、不快さを感じる時、そうじゃない時の持続や強さなどを観察しながら対応策を練っていきました。
現在は2年を経過しましたが、月1回のメンテナンスに通ってくださっています。