産前・産後の腰痛、骨盤帯痛
目次
妊娠と腰痛
妊婦の腰痛は妊娠中または産後にほとんどの人が経験すると言われています。
その原因は骨盤のゆがみや靭帯のゆるみというように書かれていることが多いようですが、実際にはこのようなことに根拠はみつかりません。
まず、妊娠中の腰痛は腰部痛と骨盤帯痛に分けて考える必要があります。
骨盤帯とは腸骨、仙骨、恥骨、股関節、尾骨とその周辺の軟部組織を指します。
妊娠20週くらいから増え始め30週では急激な増加を示します。
骨盤帯痛の原因はあまり明確にはわかっておらず、妊娠以前の運動習慣や妊娠前からの腰痛の有無なども関係すると言われています。
妊婦が感じる骨盤の不安定感
骨盤帯痛を抱える妊婦は骨盤の不安定感を訴えることが多いと言われています。
「リラキシンというホルモンの影響で骨盤の靭帯がゆるみ不安定になる」
「胎児の重さで骨盤に過重負荷がかかり骨盤がゆがむ」
「骨盤のゆがみが胎児を支えきれずに靭帯に負担がかかる」
このような触れ込みが妊婦を対象とした整体院やフィットネスクラブの宣伝文句になっていることから、広告としての情報を信じてしまっている妊婦は多くいると思います。
実際にこれほど多くの整体院がなかった20年前には、こういった概念はあまり聞いたことがありませんでした。
妊娠中や出産直後は体の体型の変化が大きく体表感覚も変化します。
腰部や骨盤部の筋はその変化に対して、収縮することで姿勢維持を行います。
日常的に運動していたり、ヨガや水泳などで体表感覚に意識が向いているとセルフコントロールしやすいため不安定さは感じにくくなるとも言われています。
骨盤帯痛の人に骨盤の不安定感を訴える人が多いのは、痛みによっておこる姿勢制御のアンコントロールが影響しているという説が有力ではないかと考えます。
妊婦の骨盤帯痛は改善するのか?
妊婦の60%は産後骨盤帯痛は改善するという信念があり、40%は何らかの症状が残存すると考えているそうです。
そしてその40%の人のうち50%は妊娠以前からの腰痛があり、20%の人に妊娠や出産に対して精神的苦痛を感じていたと報告されています。
骨盤帯痛の改善基準はアクティブ・ストレートレッグ・レイジングテスト(ASLR)で疼痛の減少が改善の予後予測になっています。
下肢を伸展して、挙上することで感じる痛みは骨盤の左右差を感じさせます。仙腸関節痛や深殿部痛などもこの検査で陽性になることがあるため注意と区別が必要です。
改善のための運動療法としても、下肢挙上のコントロールを高めるようにエクササイズしていくように指導します。
同時にクロスエクステンションなど多裂筋や大腰筋のエクササイズも体幹のコントロール性能を高めるエクササイズになります。
骨盤ベルトの効果
骨盤ベルトは恥骨より高い位置、前上腸骨棘より下部に装着すると疼痛の軽減に効果があります。
骨盤ベルトは動きによる痛みの恐怖心を軽減させ、活動しやすくするため日常生活では推奨できます。
骨盤ベルトをして痛みが増す場合は推奨できません。
活動に自信がついてきたら徐々に外す時間を長くするようにします。
深い呼吸の有効性
骨盤に痛みを有する人は
・横隔膜の可動域低下
・骨盤底下降
などが見受けられ、このような人に骨盤を支持して呼吸を補助すると、これらの徴候が逆転したとあります。
骨盤帯の疼痛は呼吸によって改善することを示唆しています。
マタニティヨガや水泳などが腰痛の改善に役立つ理由のひとつとして、呼吸機能の強化が考えられます。
当院でも呼吸指導は積極的に行います。
妊産婦の方にも安心して受けていただけるように、通常時の腰痛との違いや負担の少ないエクササイズ指導いたしますので、お気軽にご相談ください。