頚部痛の早期改善に向けた選択
目次
頚部痛の治療の選択肢
頚部痛は慢性化するほど治療が難航しやすい症状です。
よって多くの場合、徒手による対処が選択されやすい一方
有害事象も多く報告されています。
そのため、患者側からすると何を選択したらいいのかがわかりにくい症状でもあります。
推奨されているのは運動療法と認知行動療法ですが、一般的にはなっておらず
徒手や鍼灸に頼る人がほとんどではないかと思います。
上部頚椎の徒手による運動の改善
頚部の回旋運動に大きな役割を持つのは上部頚椎です。
正中環軸関節(C1~C2)は車軸関節で、回旋運動の可動域が最も大きく30~40°とされています。
また、外側環軸関節と共に屈伸、側屈も可能で環椎後頭関節と共に環軸関節複合体として頚椎運動の20~25%を占めます。
頚部痛による動きの制限を改善するために、上部頚椎にアプローチする方法または策はよく実行されます。
これらは可動域の改善が運動の自己効力感を高め、疼痛の改善につながりやすいことも意味します。
カイロプラクティックではスラストテクニックを使用しますが、理学療法士や医師はその効果や有害事象によって懐疑的な考えを示します。
頚部痛の改善に上部頚椎のモビリゼーションは上部胸椎のモビリゼーションと併用して、頚椎深部屈筋運動との比較で頭蓋椎骨角度、疼痛数値評価尺度、呼吸機能などが短期的に転帰が良好であるという報告があります。
一方で椎骨のスラストテクニックは椎骨まで並進力が伝わっていないという報告もあります。
スラストテクニックは短期的な有害事象(頭痛や筋の張り)といったものが多く報告はされますが、施術後に握力の変化など神経の促通変化が報告されています。
このように徒手による治療は組み合わせや短期効果を狙うのであれば有効な場合も多く、完全に否定することはできません。
ただ、有害事象は運動療法に比べると多くなりますので術者の技量の差や患者の状態によるところもあるため、意思疎通や同意という部分が重要になります。
頚部痛治療で見落とさないために
徒手療法家はつい技術に過信してしまいがちです。
とある患者さんの例を挙げますと
【受傷起点】
起床時に左頚部痛発症
伸展、回旋制限
炎症+
【1~4回目の介入】
2週間で4回の介入
上部頚椎のモビリゼーション
QLSに対する小円筋へのアプローチ(左上肢に放散痛)
施術後2~3日は良好
その後また強い痛みを繰り返す
【背景】
ストレスの自覚なし
入浴中も仕事のことが頭から離れない
気分転換できない
職場でイライラする
ジムに週1回は通ってフィットネス
睡眠7時間
【改善の提案】
入浴中はリラックスタイム
眼球運動と頭部のエクササイズ
肩甲骨エクササイズ
イライラのコントロール
バランスボールでの姿勢トレーニング
【2週間後】
ほぼ疼痛なし
左上肢に倦怠感
過重時の腕の挙上(左側 弱)
上腕二頭筋MMT(左 弱)僧帽筋上部代償
【翌週】
上肢の筋力回復
このように技術は治療の一部でしかなく、何が効果的か?というよりも頚部痛の背景になり得るものも判断します。
非特異的疼痛に対しては
・侵害刺激
・神経学的要因
・心理社会的要因
この視点を忘れずに持っていたいです。