大腿外側の痛みやしびれ
目次
末梢神経の絞扼による痛み
末梢神経の絞扼障害は手根管症候群が最も多いと言われています。
柔整師の先生や整体師さんは意外と神経の解剖、生理に疎い方が多く、あまり症状に対する推察に神経的な判断をしないように(できていない)思います。
下肢の神経障害では、脚がしびれると聞けばSLRを実施するくらいで陰性であればヘルニアじゃないですよと言って揉みほぐしたり、骨盤矯正をしたりとあまり評価とは関係ないアプローチを行っているのではないでしょうか?
そもそもSLRは坐骨神経の伸張テストなので椎間板ヘルニアの鑑別には信頼性に欠けます。
このように下肢のしびれ、痛みに対し、徒手療法業界は穴だらけです。
そこで、セラピストも患者さんも下肢のしびれに対して神経的な理解が深まるように記事を書きながら私自身も学習していきます。
今回は大腿外側の神経障害性疼痛に絞って考察しようと思います。
外側大腿皮神経
大腿部の痛みしびれでは、大腿四頭筋や大腿筋膜張筋、腸脛靭帯にフォーカスしやすいと思います。
これらの筋や腱に対してストレッチを行い、症状が緩解すれば
筋肉が張ってましたね〜!
なんてことで良くなったと満足していないでしょうか?
痛みしびれがあるということは
侵害受容刺激は?
感受性の高い神経は?
心理社会的要因は?
という3つの事を常に考えておく必要があります。
よって痛みのある場所→筋肉の硬さ
これが原因という説明は間違っていないでしょうか?
大腿外側部の感覚神経は大腿外側皮神経です。
L2-L3から由来し、鼠径靭帯の下を通り大腿外側の知覚を司ります。
きつい下着やコルセット、ベルトでの締めつけ
出産時や長時間の座位などによって起こります。
末梢神経障害の中で手術が必要なものとしては全体の1%ほどであり、出産時の神経損傷としては0.4%ほどだと報告があります。
鼠径靭帯の下を通過するのは他に大腿神経もあり、併発する場合もあるようです。
下肢の末梢神経のデルマトームです。
外側大腿皮神経はまさに外側の付け根付近から2/3くらいまでを占めています。
症状について
症状は支配領域の痛みやしびれ、異常感覚や灼熱感。
股関節伸展位で症状が発現し、しゃがむと治まります。
そのため、間欠性跛行のような症状を呈するたも、腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症、腓骨神経障害との鑑別が必要になります。
評価としてはASIS付近のTinel徴候です。この徴候による感度は80%と言われ、ひとつの基準になります。
しかし、陰性の場合は神経ブロックによる診断が有用であるため専門医に相談、検査依頼も視野に入れます。
ちなみに外側大腿皮神経の栄養血管は大腿深動脈から分枝して、大伏在静脈を並走する外側大腿回旋動脈、浅腸腰回旋動脈から分枝しています。
鼠径靭帯下の絞扼は神経のみならず、栄養血管の絞扼も考えられます。
外側大腿皮神経の絞扼箇所
外側大腿皮神経の走行は7パターンあると言われています。
1.鼠径靭帯下、ASIS内側を通過し、縫工筋内側を走行
2.鼠径靭帯間
3.鼠径靭帯上
4.ASIS上を通過
5.ASIS外側
6.ASIS骨孔を通過
7.縫工筋を貫通
これらの事から外側大腿皮神経絞扼は鼠径靭帯、ASIS、縫工筋が関係し、腸腰筋の筋力低下や筋緊張などによる影響も考えられるようです。
また、股関節の屈曲-内旋による梨状筋の収縮は坐骨神経の絞扼障害も起こるため、梨状筋症候群と外側大腿皮神経障害の併発リスクというのも考えられるようです。
大腿外側の痛みやしびれとして外側大腿皮神経障害を紹介しましたが、いかがでしょうか?
数は多くないようですが、臨床的には割と見かける症状です。
座りっぱなしの人、肥満体型、妊産婦などでこの付近に痛みを訴えた場合は疑うべきです。
また、腸腰筋、縫工筋、梨状筋など股関節に関連する筋とこの神経の走行はより理解する必要がありそうです。
患者さんは太腿の外側に痛みを感じたら、整形外科かペインクリニックを受診すると良いかと思います。
その前にまずは…という方は当院へお越しください。