ストレッチでは改善しなかった首の痛み
目次
患者
40代男性 会社員
ストレッチをしても改善しない首の痛み
半年前に首の右側に出来た血腫を切除
2か月前から右を上にして寝るとツッパリ感を感じ、ストレッチをしても改善せず。
鍼灸にも2回ほど通院したが改善はなかった。
可動域は右回旋、屈曲時に痛みは強くないが充分ではない。
右側屈でツッパリ感
検査
触察で判断すると右は斜角筋群が短縮し、筋のタイトネスが生じた状態。
斜角筋による神経症状はなし
可動域のエンドフィールに抵抗を感じます。
問診で睡眠時にベッドではなく、疲れてソファや床で寝てしまうこともよくあるようで、家族特に両親との間に問題があり、家ではリラックスしにくいとのこと。
改善策と治療戦略
・斜角筋群のタイトネスを改善
・睡眠時の環境
・両親との距離感
このあたりをケアしていこうと思います。
◆選択したコース
都度払い 治療としては3回ペースは2週間おき
通院記録
1回目
回旋時の可動域を確保するため上部頚椎の回旋モビリゼーション
鎖骨上神経領域のスキンストレッチ
斜角筋に対しては等尺性収縮をつかった抵抗運動のエクササイズを指導。
セルフエクササイズでストレッチよりも効果を感じられました。
タイトネスな筋はストレッチをすることで余計に筋が強固になることがしばしば起こります。筋には過剰なカルシウムイオンの供給が起こっている可能性があり、筋収縮が過剰になっています。
こういう場合は、適度に収縮をさせることで適切な神経伝達を促すことができます。
睡眠環境に関してはまずはベッドに入って寝ること
家族関係に関してはどのくらいの距離感が居心地が良さそうか?という部分をイメージしてみるように伝えました。
2回目
2週間後に来院されたときは、ほぼ痛みなし。
改善された点は
・等尺性エクササイズを毎日やること
・睡眠環境を正した
・両親の事より自分の予定を優先
若干の張りは仕事後に感じないこともないが、ほとんど気にならなくなった。
3回目
右の首の緊張感、つっぱりはほぼ感じない。
自覚症状は0に。
今後はストレングストレーニングコースに加入し、継続的にエクササイズとボディケアを併用していくことになりました。
施術後記
首のツッパリ感と聞くと筋肉が硬くなっているようなイメージがありますが、それはいわゆるコリのような硬さなのか?それとも伸びないような硬さなのか?で対処の仕方は違ってきます。
コリのような硬さの場合は、筋硬結・・・動作時の疼痛はない
伸張しにくい状態は、筋攣縮・・・動作時に痛みを感じる
この方の場合は、筋の伸張性が欠けた状態でしたので、まずは適切な収縮をおこすことがポイントです。
筋攣縮では揉みほぐしたり、ストレッチしたりするよりも、縮めることが足りないのと同時に周辺の血液供給を増やす必要があります。
等尺性エクササイズは筋収縮を小さな力で促すことが可能です。
また、睡眠環境が悪かったため、休息が取れておらず、疲労が回復できていないことも問題でした。
睡眠不足は交感神経を優位に働かせ、休息を妨げます。
そして、睡眠不足は痛みの感受性を高めます。
痛みの治療、違和感の治療はこういった生活を見直すだけでも改善しやすくなります。
普段から空手やジムでの筋トレを行ってきた方ですので、体力や筋力は充分です。
しかし、家庭内での環境や生活習慣の影響で回復が遅れてしまうことはよくあります。
今後は慢性的な背部の張りや腰の重さなどもあることから、機能的なエクササイズで動きやすい体を目指してもらいます。