腹筋と腰痛
目次
腹筋が弱いと腰痛になるという信念
腹筋の弱さが腰痛に関連するという信念は根深く存在します。
同時に体幹筋の弱さやスタビリティの低さは腰痛にとって深刻であるという信念もあります。
これらはあまり根拠となる証拠やデータがないにも関わらず、広く信じられているようです。
腹筋は主に
・腹直筋
・腹横筋
・腹斜筋
この3つの筋がお腹の周囲を取り巻くような形で存在します。
腹筋は天然のコルセットといった表現もよく耳にします。
腰痛と腹圧
腰痛患者の呼吸機能は弱くなりがちで、横隔膜の活動量などが屈曲姿勢が多くなるために姿勢的にも、呼吸機能的にも阻害されてしまいます。
そのため、腹圧の低下や腹圧の上昇といった言い方がされがちです。
姿勢や筋の収縮で腹圧が大きく変化することは、実際は考えにくく、むしろ腹部の運動性が低下することで姿勢支持機能や呼吸機能が低下することで脊柱起立筋や多裂筋の過伸張が起こり、痛みと相まってスパズムを起こすことが痛みを助長していると考えられます。
この時、腹直筋は短縮するため張力を働かせにくい状態になります。腹横筋、腹斜筋は活動しにくくなるため、弱さというよりは、はたらきにくさという表現が近いようにも感じます。
腹横筋と腹斜筋は腰痛患者にとって指標になる筋です。
痛みのある側の腹斜筋、腹横筋は収縮しにくいという報告もあります。
不安定な座位と腹筋
バランスボールに座位姿勢でいる状態の腹筋を筋電図で測定してみたところ、腰痛患者の方が健常者よりも筋活動は高かったそうです。
また、腰痛患者の腹直筋の横部は健常者の同部位と比較すると厚みがあったという報告もあります。
実は腰痛患者の方が、腰痛のない人よりも腹筋が活動的であるようです。
腰痛の原因が腹筋の弱さと言われますが、このような結果を見ると少し見え方が違ってきます。
慢性腰痛の方は実際に腰椎や骨盤が不安定ということはなく、不安定感を感じる感度が高いと言われています。
よって、不安定なバランスボール上での座位に対しても、姿勢のコントロール機能を高めようと腹筋群を多く動員させるのでしょう。
当院でも慢性腰痛患者さんには、バランスボールを使ったトレーニングをします。
その意図は、不安定な状況下で自身の体勢をコントロールする機能を高めることにあります。
特に屈曲動作に恐怖がある方や、長時間の同姿勢に痛みを感じるなどの症状を抱えた腰痛に対して、これらのエクササイズは自己効力感を高め、痛みのコントロールに役立ちます。