座位姿勢の癖と筋への影響
目次
毎日の何気ない「座る」ということ
あなたは日常でどのくらい座っているだろうか?
日本人は世界で一番座っていると言われ、一日7時間も座っています。
しかし、座ることは今や喫煙よりも健康に良くないとされ、腰痛や首肩の痛みを引き起こしやすくするだけでなく、循環器の悪影響も注目されています。
当院の患者さんも座りっぱなしによる不良姿勢や運動不足によって、様々な不調を訴えています。
日ごろ、当たり前のように行う「座る」という行為。
肉体的にはどのような影響があるのでしょうか?
座ることの骨格筋への弊害
長時間にわたる座位が骨格筋に対して起こす問題はいくつか報告されています。
座位によるスランプ(猫背)は脊柱のローカルマッスルとグローバルマッスルの両方に対して筋張力を低下させ、弱化させます。
このことで能動的システムが働きにくくなり、受動的システム主体の姿勢になるためスランプ座位や異常姿勢が顕在化します。
受動的姿勢は靭帯や関節包の伸張性を利用した骨格維持になるため、関節周囲へのストレスが高まり、椎間板や膝関節への負荷による障害を高める不安があります。
正しい座り方というには支持基底面に重心から下に引いた垂線が乗る圧中心が乗る状態とされています。
前傾すれば重心の位置は前方へ、後傾すれば重心の位置は後方に移動します。
そのため、座位から立ち上がる際は重心が前方にある方が支持基底面上に収まりやすく動きやすくなります。
しかし、受動システムに依存した姿勢になると骨盤の後傾が顕著になるため後方重心になり、下肢に重さが伝わりにくくなります。
座位姿勢の長時間によって、起こるスランプ座位が腰痛リスクや膝への負担、筋力低下の要因になるのは想像できます。
脚組みに関しても悪癖と言われますが、脚組はスランプ座位の人が腰の疲労を感じた際にさらに腰部、または臀部の可動域を減少させることで骨格筋の力を利用せずに座ることができるためエネルギーの効率は高まります。
しかし、前提として疲労度が高い場合の代償座位であることと、筋力が弱い人がしやすい座位ということがあるため、逆に股関節の運動性を低下させる座り方になってしまいます。
特に脚組の場合は内腹斜筋の筋力低下がみられたそうです。
メリットもありますが、デメリットの方が高いため悪癖とされ、推奨されないのだと思います。
長時間座位と荷重力
長時間座位が続くことで地面を踏みしめる力(荷重力)にも影響があると言います。
特に股関節の伸筋であるハムストリングス、大殿筋と足の背屈筋である前脛骨筋は促通および反応速度が低下することで、立ち上がる際の腰痛、膝痛にも影響があるようです。
踵部に重心を置いた場合は、膝伸筋の活動はそれほど大きくなかったとのことでした。
長時間座位、またはスランプ座位によって生じる骨盤後傾や股関節の屈曲はこれらの筋の活動を低下させます。
このことから
長時間座位が続く場合
・股関節伸筋のエクササイズ
・内腹斜筋エクササイズ
・足関節背屈エクササイズ
このような運動が必要になってきます。
猫背ばかりが注目されますが
座ることで生じる不良姿勢では、猫背や巻き肩など上半身の問題が注目されやすいようですが、実は下半身の方が深刻かもしれません。
もっと言うのであれば座ること以上に「歩かない事」の方が股関節や足関節の筋力を低下させ、弊害かもしれません。
やはり1時間に一回は立ち上がることや、脚を大きく振るような動作や運動は大切です。
座ること=悪い慣習のようになっていますが、それがどこの筋に影響するかを知るだけでも座った後のケアがしやすくなるのではないでしょうか?
長時間座る日があれば、いつもより長く歩いて帰るだけでもいいかもしれません。